若者の話
ある若者がいました。
彼の夢は、人生で成功すること。
具体的には、お金持ちになることです。
彼は、ある方法、それもとても簡単な方法によって、短期間のうちに、その夢を実現したのです。
さて、その方法とは・・・。
「成功者になりたい」
成功者になりたいとの思いは強かったものの、彼は、どこにでもいる若者。
特別な能力をもっていたわけではありません。
どうすれば成功できるのか、一生懸命になって考えたものの、なかなか良いアイデアは出てこないのです。
考えあぐねた結果、いっそ、「すでに成功している人に、その秘訣を教えてもらおう」と思い付きました。
彼が取った行動は、一代で財をなした人、大企業のトップ、あるいは、多数の本を出版していたり、TVに出演しているといった有名人などなど・・・、彼が成功者と考える人たちの連絡先を調べ上げ、片っ端からFAXを送りました。
そこには、
「あなたは、人もうらやむ大成功を収められています。その秘訣を、是非とも教えていただきたい。できましたら、回答文をFAXしていただけますか?」
と書きました。
さらに、この時点で、「自分と同じような考えを持っている人はたくさんいるだろうから、それらを本にして売れば良い」と気づいたのです。
FAXには、追加で「よろしければ、あなたの秘訣を広く世の中に紹介したいのです」と書き足したのですね。
すると、思いも寄らぬ数の、しかも、しっかりと秘訣が書かれた返信が集まったのです。
彼は、それらを「絶対に成功する秘訣」というタイトルで一冊の本にまとめあげ、出版しました。
この本は、若者が成功したという内容ではなく、多数の実際の成功者が、その秘訣を自身で綴ったものです。
紛れも無く成功者による成功の秘訣、つまり、「絶対に成功する秘訣」が書かれているわけですね。
本はバカ売れ。彼は一気にお金持ちとなったのです。
いかがですか?
「いかにも」の作り話って感じですかね?
私自身、人から聞いた話ですし、ウラを取っていませんので保証はできませんが(笑)、これ、実話だそうです。
この若者は、たしかアメリカ在住のインド人で、時代はまだ、ネットが広がる前、FAXの送り先は、アメリカを中心とした世界中の成功者、とのことです。
現在の日本でやったとしたら、まともな回答は一通も来ないでしょう。
でも、海外であれば、そして、少々、昔であれば、十分、ありえる話かと。
思うこと
さて、この話から、私自身、いくつか思うことがありました。
臆しない気持ち
成功者に聞きたいと思っても、常識的な発想だと、「一介の若者が、個人的に知りたい、本を出版したいと言ったところで、エライ人がまともに相手してくれるわけがない」と考えますよね。
そして、「どうせ、無駄だからやめておこう」となると思います。
でも、彼は実行しました。
さらに、いきなりFAXを送りつけて、回答文を返信せよ、とやったのです。
相当、失礼なことではありますが、逆に、これがよかったと思います。
もし、「お会いして、話を伺いたい」と伝えていたら、警戒されて会えなかったでしょう。
ダメ元と思っていたのか、あるいは「常識のない人」なのか、
(もしかしたら、彼が属する文化では「非常識」ではないのかもしれませんが・・・)
そのあたりは何とも言えませんが、少なくとも彼は、臆しない人であり、行動力のある人だと言えるでしょう。
そして、結果的に、大変少ない労力で、貴重な「原稿」を多数、入手できたのです。
心理的な”くすぐり”
誰でも認められたい気持ちは、持っています。
まして、成功者であればあるほど、自分は「すごい!」って自負心は強いし、だからこそ、より刺激的な表現で「すごい!」と言いたい・言われたい、そんな気持ちが強いのではないでしょうか?
自慢したくてウズウズしている、そして、もっともっと認められたい、彼は、そんな人たちの気持ちを、「自己表現の場の提供」という形で、うまくくすぐったのだと思います。
一方、そんなに簡単に、成功の秘訣を教えてくれるのか?と疑問に思います。
おそらく、成功者には、自慢したいという気持ちとともに、「秘訣をオープンにしたところで、問題ない」という考えがあるように思います。
例えば経営者であれば、とある時代に、とある商品やシステムを革新的に導入したから成功したのであって、それを今、そっくり真似したところで、うまくいかない、と考えているでしょう。
さらに言えば、「この俺がやったから成功したんだ」という自尊心もあるでしょうし、ね。
ここまで計算したかどうかはわかりませんが・・・。
ニーズの捉え方
この若者、最初は単に「成功者の真似をしよう」と考えたのです。
で、それで終わっていたら、仮に、成功の秘訣が聞けたとしても、彼自身が成功できたかどうかはわかりません。
ところが、「自分が欲しいものを、自分以外で欲しがる人は、きっといる」と発想したことで、「だったら本にしたら売れるはず」と思いついたのではないか、と。
つまり、ニーズをマーケットではなく、素直に自分の中から見出したということですね。
ニッチな領域では、わりとある話なのかもしれませんが・・・、商売の原点って、自分が欲しいものを売るってことかも、と思いました。
まとめ
考えようによっては、この若者は、「他人のふんどしで相撲を取った」わけです。
それでも、やっぱり、すごいなって思うのです。
彼は、目の付け所が素晴らしかったのと、常識外の行動力をもっていた。
そして、何より、自分に素直だったのではないか、と思います。
万人に共通する成功の秘訣とは、もしかしたら、この辺りにあるのではないか、と考えさせられました。
では、また!