10月10日と聞くと、反射的に「体育の日」と答える人は、そこそこ、お歳を召された方じゃないかと思います(私はそうです・笑)。
「体育の日」は、法律で10月の第2月曜日と定められていますが、もともとは10月10日だったんですね。
では、なんで10月10日が「体育の日」だったのか?ですが、1964年の東京オリンピックの開催日がこの日だったからで、2年後に「国民の祝日」になったという次第。
それから30年以上、「10月10日は体育の日」でしたが、2000年に「ハッピーマンデー制度」の適用をうけ、10月の第2月曜日に変わったのです。
2020年は、東京五輪が予定されていたため、開会式がある7月24日の前後が4連休、閉会式がある8月9日前後が3連休になりました。
といっても、あらたに国民の祝日が増えるわけではなく、「海の日」「山の日」「体育の日」を移動させて連休にするという、2020年に限りでかなりの無茶をやることが法律で決められたんです。
残念ながらオリンピックは2021年に延期となったため、2021年も同じ措置が取られています。
あと、「体育の日」は2020年から「スポーツの日」に名称が変わります。
さて、みんな大好きな「国民の祝日」、全部で16日あります。
調べてみたら、それぞれに由来と意味があっておもしろかったので、ザックリとまとめてみました。
祝日と祭日の違い
カレンダーで赤字で書かれている特別な休みの日を「祝日」とか「祭日」、場合によっては祝祭日と呼んだりしますよね。
「祝日」と「祭日」、何がどう違うのか調べてみたら、法的には「国民の祝日」が正しい使い方でした。
「国民の祝日に関する法律」というたった三条から成る短い法律があって、ここで祝日について定められているのです。
では、「なんで休日のことを祭日と言うの?」なんですが、先の大戦前までは、皇室で祭りごとが行われる日のうち、国民も休んでいた日のことを祭日としていたから。
この当時は、「祝日」と「祭日」が明確に区分されていたのです。
それが「国民の祝日に関する法律」が制定されるに伴い、「祝日」に一本化されました。今でも、祭日とか祝祭日と言うのは、当時の名残りなんですね。
「国民の祝日に関する法律」
「国民の祝日に関する法律」、めっちゃ短いので以下、引用します。
国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日
第一条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
ものすごいことが書かれています(笑)。
「よっしゃ!休みだ!」ってはしゃいでいたら、バチがあたりそうな勢いですね。
国民の祝日
第二条 「国民の祝日」を次のように定める。
元日 一月一日 年のはじめを祝う。
成人の日 一月の第二月曜日 おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。
天皇誕生日 十二月二十三日 天皇の誕生日を祝う。
春分の日 春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。
昭和の日 四月二十九日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。
憲法記念日 五月三日 日本国憲法 の施行を記念し、国の成長を期する。
みどりの日 五月四日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。
海の日 七月の第三月曜日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。
山の日 八月十一日 山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。
敬老の日 九月の第三月曜日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日 秋分日 祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ。
体育の日 十月の第二月曜日 スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう。
文化の日 十一月三日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。
勤労感謝の日 十一月二十三日 勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。
これまた、仰々しいことが書かれていますねぇ。
*下線は、年によって日が変わる祝日
「成人の日」の
おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
って、自立・自活の意思がない人は、祝ってもらえないし、はげましてももらえないということですね(笑)。
祝日は休日
祝日の運用について書かれているのが第三条。
第三条 「国民の祝日」は、休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。
国民の祝日の定義を見ると、
- 「その日じゃなきゃダメ」と月日が決まっている祝日
- 「この月のこの月曜日ですよ」というハッピーマンデー(成人の日、海の日、敬老の日、体育の日)
- 月日は大体決まっているけど年によって違う祝日(春分の日・秋分の日)
と3パターンに分かれています。
2と3は、何やら難しいことが書かれていますね。
これ、要約すると、
- 祝日が日曜日だったら、翌日の月曜日が振り替えで休日になりますよ
- 祝日にはさまれた日は休日にしますよ
という意味です。
祝日にはさまれる日ってどういうこと?と、思い調べたら、もともとは、5月3日「憲法記念日」と5月5日「こどもの日」にはさまれた5月4日を休日にして、3連休にするために作られたものでした。
でも、「昭和の日(4月29日/旧・昭和天皇の誕生日)」の制定に伴い、「みどりの日」を4月29日から5月4日に移したため、いったん、意味がなくなったのです。
ところが、「敬老の日」を9月15日から9月の第3月曜日に改正したところ、9月20日か21日になる年ができました。
「秋分の日」は、9月22日か23日のいずれかなので、三連休(土日含めたら五連休)を確保するためには第三項はやっぱり必要となったのです。
祝日のルーツを調べてみた
各祝日、16日分の成り立ちを調べてみました。
いろいろな経緯があっておもしろかったですよ。
中でも「建国記念の日」の紆余曲折は興味深かったですね。
元日 1月1日
「四方節」という元日の早朝、天皇陛下が一年間の豊作と無病息災を祈る「四方拝」という祭祀を行う日から。
成人の日 1月の第2月曜日
もともとは1月15日。
小正月で、元服の儀式が執り行われていたことから、この日に制定されました。
建国記念の日 政令で定める日 (実質、2月11日)
初代天皇である神武天皇の即位日。戦前は「紀元節」と呼ばれていました。
即位日は日本書紀では旧暦の1月1日と記されており、明治になって新暦に換算しなおしたもの。
他の祝日は「いつ」というのが「国民の祝日に関する法律」に明記されているのですが、「建国記念の日」だけ「政令で定める日」となっています。
なんでこの祝日だけ変な決め方がされたのかというと、まぁ、いろいろな紆余曲折を経ていたんですね。
まず、明治6年に神武天皇即位日を「紀元節」として、法律で祝日に定められます。
ところが戦後、天皇制を快く思っていないGHQがダメ出しして、廃止になるのです。
その後、議員立法として「建国記念日」を制定しようとの法案が出されますが、
- 神武天皇って本当にいたのか?
- 旧暦の1月1日に即位したって本当か?
- 新暦に直すのは筋が違うだろう?
とツッコミが入りまくります。
それから、なんと9回も法案を提出しては廃案になることを繰り返したのです。
しかし、どうしても「建国記念日」を制定したい人は考え抜いて、あるアイデアを思いつきました。
それは「建国された日を祝う」のではなく、“建国されたと言う事象そのものを記念する日”と解釈できればいいんじゃないか?というもの。
こうすると、歴史的な信憑性は、多少、あやふやでもOKとなりますから、ね。
そして、「建国記念の日」と(の)をいれることで折り合いをつけ、成立したのです。
言ってみれば、妥協の産物ですね。
月日は毎年2月11日と決まっていますが、ギチッと法律で明文化すると反対派がまた騒ぎ始めるので、日付は法律より格下にあたる政令で定めたようです。
天皇誕生日 2月23日
天皇の誕生をお祝いする日です。
春分の日 春分日
国立天文台が前年の2月に算出した春分日で、3月20日か21日のいずれかとなります。
(黄道と天の赤道が交わる日。昼と夜の長さが同じになる日ではありません)
元は「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」という天皇が歴代の天皇・皇后・皇親の霊を祭る儀式が行われる日。
昭和の日 4月29日
もともとは、昭和天皇の誕生日です。
崩御されたことで「生物学者であり自然を愛された昭和天皇をしのぶ日」として「みどりの日」となったのですが、激動の昭和を顧るなどの主旨で2007年から「昭和の日」となりました。
なお、「みどりの日」は「国民の休日」であった5月4日に移されています。
憲法記念日 5月3日
日本国憲法が施行された日。
みどりの日 5月4日
「昭和の日」記載のとおり。
こどもの日 5月5日
男の子の成長を祝う「端午の節句」がルーツです。が、なぜ「こどもの日」という祝日を設けたのか、そのいきさつは諸説あって調べきれませんでした・・・。
そしてこの日は、法律では「母に感謝する日」とも定められているんですね。
(通例的な「母の日」が5月第二日曜日というのは、アメリカがルーツです。他の国では別の日が「母の日」となっているケースがたくさんあります)
ちなみに、「節句」とは以下の5つ。総称して「五節句」と呼ばれています。
- 1月7日 : 七草粥で新年を祝う「人日(じんじつ)の節句」 別名「七草の節句」
- 3月3日 : ひなまつりとして有名な「上巳(じょうみ・じょうし)の節句」 別名「桃の節句」
- 5月5日 : 男の子の成長を祝う、こどもの日「端午(たんご)の節句」 別名「菖蒲の節句」
- 7月7日 : おり姫、ひこ星の物語で有名な「七夕(たなばた)の節句」
- 9月9日 : 菊花の香りの酒で月をめでる「重陽(ちょうよう)の節句」 別名「菊の節句」
基本的には一ケタ奇数月で月と日が同じ日が「節句」ですが、1月だけ7日なんですね(元日は節句ではありません)。
海の日 7月の第3月曜日
1995年制定当初は、「海の記念日」であった7月20日でしたが、ハッピーマンデー制度導入により7月の第3月曜日に。
昭和40年代以降、海事関連団体が「海の日」を祝日にしてほしいとの運動を行ったものの、見送られていました。
平成の時代になって、祝日を増やそうという機運が高まっていた中、祝日化を希望する署名を1000万人分集めたということもあり、制定されたのです。
6・7・8各月には国民の祝日がなかったというのも、導入の大きな理由のようですね。
山の日 8月11日
2016年から施行された一番新しい「国民の祝日」です。
「海の日があるのに、山の日がないのはおかしい!」
と山岳関連団体の方々が頑張って制定されました。
最初は、多くの山で山開きが行われる6月の第一日曜日が候補でしたが、
「日曜日が祝日というのは違うんじゃないの?」
と反対が出ました。
そこで、ライバルの「海の日」がある7月は避けて、山のシーズンである8月に。「せっかくなのでお盆にくっつけよう」となったのです。
8月12日が第一候補となるも、日航機の事故の日であることを考慮し、8月11日に制定されました。
敬老の日 9月の第3月曜日
もともとは9月15日でした。これは、兵庫県にあった間谷村が、9月15日を「としよりの日」としていたのがルーツ。
月日制定の理由は、9月中旬が気候が良く農閑期であったからだそうですが、それ以上の深い理由はないようです(笑)。
秋分の日 秋分日
「春分の日」と同じく、国立天文台が前年の2月に算出した秋分日で、9月23日がメイン。たまに9月22日になる年があります。
元は「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」。
体育の日 10月の第2月曜日
本エントリー冒頭記載のとおり。
*ちなみにオリンピックの開催日が10月10日になったのは「晴れの特異日」だからという説がありますが、これはマチガイ。この日は、そこそこの確率で雨が降っています。
選定経緯は、まず秋晴れとなる10月に開催されることが決まり、最も晴れが多かった15日が第一候補となるもその年は木曜日なので却下、第二候補の10日は土曜日だから都合が良いと、この日に決定したそうです。
文化の日 11月3日
日本国憲法が公布された日。
日本国憲法は、文化国家の建設を目指すものであることから「文化の日」と命名されましたが、元は「明治節」という明治天皇の誕生日を祝う祝日です。
憲法絡みで祝日が2日もあるんですよね。
勤労感謝の日 11月23日
もともとは「新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)」という祭日。天皇が五穀の新穀を天神地祇(てんじんちぎ)にすすめ、自らもこれを食して、その年の収穫に感謝する日です。
「国民の祝日に関する法律」が制定される際、その主旨から「勤労感謝の日」と命名されました。
まとめ
国民の祝日、調べてみたら知らなかったことがたくさんありました。
長い歴史を持つものから、今年から施行されたもの。
祝日となった由来も意味深いものから、結構、アバウトなものまであって、本当におもしろかったですね。
なお、「こどもの日」と「敬老の日」を「祝日」としたのか、その理由までは、調べきれておりません。
なんとなく・・・ですが、「勤労感謝の日」という働く大人の日と「成人の日」を作ったのだから、子供と老人の日も作っておこうというバランスを取る発想だったのではと思うのですが・・・、どうでしょうか、ね?
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