サンクコスト効果とゼロベース思考について

 

先日、ラーメン店のチェーン展開をしている社長の成功の秘密を探るといった内容のテレビ番組を見ました。

その中で、

「事業を開始して間もない頃、新規出店した店が、どうやっても赤字続きでした。

しかし、社長はあることを行った結果、それが後々の成功に結びつきました。

さて、社長が行ったことは何だったでしょうか?」

とクイズ形式で投げかけがあったのです。

この答えは、何だったと思いますか?

 

ラーメン店のチェーン展開が成功した理由

この社長が、後々のラーメン店のチェーン展開に成功した理由、それは、

「不採算店から撤退する」

という実にシンプルなものでした。

社長いわく、

「ダメなものは、何をやってもダメ。

なのに頑張ったところで、傷口が開く一方。

だったら、さっさと見切りをつけて、他の店に力を注いだほうが良いということを学んだ」

出店以降、様々な努力はしたでしょうけれど、あるタイミングで「これは、ダメだ」と気付き、「撤退する」と判断したとのこと。

店がどういう状態だったか、何をもって決断したかといった具体的な話は全く出てこなかったので詳細は分からないのですが、社長はこのとき、「撤退する」したことが、それ以降の成功の大きな要因だと言っていました。

 

サンクコスト効果とは

サンクコストという言葉をご存知でしょうか?

サンクコストとは、「sunk cost」。日本語では「埋没費用」と呼ばれているもので、事業や行為などで、撤退した場合に戻って来ない費用のことを指します。

 

何かの事業を始めると、準備段階も含め事業スタートしてからも、様々な労力や時間が必要ですし、お金もかかりますよね。

残念ながら事業がうまくいかずに赤字続きで撤退せざるを得なくなったら、それまで費やした労力や時間は戻ってきませんし、お金も持ち出しになった分は取り戻せません。

こういった戻って来ない時間・労力・お金をサンクコストと呼びます。

 

そして、サンクコストが「もったいない」からと、ムダだと分かっていても、これまでと同じ行為を続けてしまうことを「サンクコスト効果」と呼ぶのです。

買った株が値下がりしても損切りできない、パチンコ・パチスロで負けがこんでいてもお金をつっこんでしまうと言ったケースはこれに当てはまりますし、勉強やスポーツで「ここまで頑張ったんだから、もう少し」というのも近いケースといえるでしょう。

 

実際、どんなことでも「撤退する」のは勇気が要りますからね。

パチンコだと「あと1回、回せば絵柄が揃う」と期待するのは当然ですし(この期待が持てない人は、そもそもパチンコをやらないでしょう)、あきらめて席を立ったとたん、他の人が座ってすぐに絵柄が揃うという経験があると、なおさら止められないものです。

このように、事業に限らず、日常のいろいろな場面でこの「サンクコスト効果」は見られますが、残念ながら「報われることの無いムダな努力」を続けているということです。

(パチンコは、揃う場合が結構ありますので、例としては不適切だったかも・・・苦笑)

 

サンクコスト効果となる別の理由

これまでの努力が無駄になるのはもったいないという「サンクコスト効果」、実はもうひとつ、こんな考えが理由としてあります。

それは、

これまでの努力が十分だったか?

という疑問がついて回ることです。

 

そもそも、どれだけ努力すれば成功できるのかが分からない以上、もしかしたら、まだまだ頑張りが足りないのではないか?と思うのも当たり前です。

この努力とは、労力的なものはもちろん、時間やお金なども含みます。

もし、努力が不十分だと判断すれば、継続するわけですが、しかし、一方でその努力がやはりムダなものかもしれない可能性は十分あります。

そして、時間と労力もそうですが、お金を費やす場合、後々に受けるダメージが大きく膨れ上がってしまうこともあります・・・。

 

撤退の判断基準とゼロベース思考について

では、この「サンクコスト効果」を乗り越えて、撤退判断するにはどうすればよいでしょうか?

私が思うに、

  • 撤退の条件をあらかじめ決めておくこと
  • ゼロベース思考を行うこと

の2つがあるのでは、と。

撤退の条件

事業を始めるとき、「いつまでに、何が、どうなっている」という事業計画を作りますが、その中にあらかじめ、撤退条件を織り込んでおくことが大切だと考えます。

また、前提となっている環境が悪い方に変化した場合なども撤退を考えるきっかけになるはずです。

 

ゼロベース思考

このように撤退条件を事前に決めていても、いざ、その状況になったら、なかなか踏ん切りがつかないもの。

マイルールを守れないというのは・・・、感情が先立っている以上、仕方ないことなんですよね。

 

そういうときは、これまでに費やしたものを一旦、置いておいて、

今がスタートだったとして、ゼロベースで同じことをするか?

と自問自答するのです。

 

すると、多くの場合、冷静になって「止めておこう」となるはずなのです。

先のスタート時点とは、意識も変わっていれば、環境も変わっているでしょうからね。

(あと、苦労したことやつらかったことがリアルに思い浮かびますしね。もっともこれは、ゼロベース思考ではありませんが)

この考えになれると、これまでの努力は惜しみつつも、撤退する勇気が湧いてきます。

そして、そのままムダにお金と時間をツッコミ続けて、取り返しがつかなくなることを避けることができるはずです。

 

まとめ

自分はムダな努力をしているのか、それとも、まだまだ努力が足りないのか・・・。

一体どっちなのか分からないところが、本当に悩ましい限りです。

ただ、うまく出来ていないことなのに、「サンクコスト効果」によって取り返しのつかないところまで突き進んでしまうことがある、と念頭において、時に冷静になって見切る勇気も大切だと考えます。

 

あわせてどうそ!

 

ではまた。