会社都合によって退職された方は、「特定受給資格者」となり、失業保険の給付日数は自己都合で退職した人よりも多く設定されています。
一方、自己都合退職した人でも、ある一定の条件を満たして「正当な理由のある自己都合退職」と認定されると、通常の自己都合退職より有利な処遇を受けることができます。
このような方を、「特定理由離職者」といいます。
特定理由離職者になるための条件とは?
特定理由離職者として認定される条件は、以下のとおりです。
- 期間の定めのある労働契約が満了して、本人は契約の更新を希望したのに更新されず退職となった
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷などで退職した
- 妊娠、出産、育児等などで退職し、受給期間延長措置を受けた
- 家庭の事情が急変し、父母の扶養・看護のために退職した
- 単身赴任などの別居生活を続けられなくなり退職した
- 不利な転勤命令や結婚・育児などで通勤が難しくなり退職した
- 人員整理などの希望退職者の募集に応じて退職した
特定理由離職者になったら受けられる優遇措置とは?
「特定理由離職者」となると通常の自己都合退職者よりも優遇措置を受けられます。
失業保険がもらえる日数がふえる
失業保険がもらえる日数(所定給付日数)は、会社都合退職と自己都合退職で大きな差があります。
「特定理由離職者」のうち、
- 上記「1」の有期雇用契約が更新されなかった人
- 上記「2~7」に当てはまる人で、離職以前、離職以前2年間に雇用保険に加入していた期間が6ヶ月以上1年未満の人
は、会社都合退職者と同じ日数分、失業保険が付与されます。
前者は「解雇された」のと同じ扱い。
後者はもともと失業保険の受給資格がないけれど、「特定理由離職者」に認定されることで失業保険がもらえる、ということですね。
給付制限期間がなくなる
自己都合退職の人には、3ヶ月の失業保険の給付制限期間が設けられています。
この間は失業保険は支給されませんが、失業認定を受けるために月当たり3回以上の求職活動を行わなければなりません。
「特定理由離職者」になると、給付制限期間がなくなるため、すぐに失業保険がもらえるようになり、求職活動も月2回となります。
この負担感の差は、とても大きいのですね。
特定理由離職者として認められるには?
退職理由の確認
自己都合退職した人は、会社から届く「離職票-2」の離職理由の欄をチェックしてください。
下のほうにある「5 労働者の判断によるもの」の「(2)労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)」にチェックが入っていると、「自己都合退職」となります。
また、この場合は、さらに下の欄「具体的事情記載欄(事業主用)」に「自己都合による退職」などと書かれているはずです。
このままだと、ハローワークでは確実に「自己都合退職」として処理されます。
ハローワーク初回訪問で申し出る
あなたご自身が「特定理由離職者」の条件に当てはまるのであれば、「離職票-2」の下の欄にある「具体的事情記載欄(離職者用)」に理由を書き、さらにその下の「⑯離職者本人の判断」で「事業主が○をつけた離職理由に異議 有り 無し」の「有り」を○で囲みます。
そして、ハローワーク初回訪問の手続きの際に、正確な退職理由を担当者に申し出て下さい。
その際、あなたの退職理由を証明できるものを持参すると良いですよ。
「希望退職」と「退職勧奨」に要注意!
「有期雇用契約が更新されなかった」以外の理由で、特定理由離職者になった場合の優遇措置は、給付制限期間がなくなることであり、残念ながら失業保険の支給日数増は期待できません。
ところで、退職された方のなかには、「人員整理などの希望退職者の募集に応じて退職」する方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もし、あなたがこれに該当するのであれば、特定理由離職者となります。
一方、「特定受給資格者」となる条件として、「会社から直接・間接的に退職の勧奨を受けた」があります。
「希望退職」と「退職勧奨」、退職の仕方として微妙な違いですが、失業保険がもらえる日数は150日か330日と全然、違ってきます。
会社によっては、実質的に「退職勧奨」を行っているのに、事務手続き上「希望退職」という扱いにしてしまうところがある、との話を時折、耳にします。
そのほうが、会社にとって都合の良いことが多いからだとか。
万一、あなたが「退職勧奨」で会社を辞めたのに、「希望退職」にされてしまったら大問題。
「退職勧奨」を受けるのならば、YESの返事をする前に、会社側に「退職勧奨に基づく会社都合退職」となることを確認しましょう。