左遷や降格など納得のいかない人事の裏側にあるもの

 

会社勤めを続けていると、否が応でも「人事」の対象者となります。

自分自身にとって「良い人事異動」であれば、本当に嬉しいものですが・・・、左遷や降格など納得がいかない人事の場合も。

むしろ、人事は「自分にとっては良くない」と感じることのほうが多いような気がします。

あきらかな左遷や降格はもちろんですが、嫌な部署への異動、同じ部署内で下位の仕事への配置替えや担当業務替えなど納得のいかない人事にめぐり合うことが多々あります。

 

会社員という「宮仕え」である以上、納得のいかないものであっても、人事異動の内示を断るのは難しいもの。

その会社で仕事を続けるためには、イヤな人事であっても甘んじて受けざるを得ないのですが、そもそも、人事異動って、どうやって決められていくのか?すごく気になりますよね。

そこでこちらでは、人事部に所属して採用や人事配属を経験し、また、管理職として部門人事を担当した私が、たくさん見聞きし関わってきた「左遷や降格など納得のいかない人事の裏側にあるもの」をご紹介します。

 

会社に入ってまだ何年も経っていないという方や、中堅社員になってそろそろ本格的な人事異動の対象になったという方、必見です。



 左遷・降格・納得のいかない人事

納得のいかない人事には2種類あります。ひとつは自分の人事、もうひとつは他人の人事。この2つを具体的に区分すると以下のようになります。

自分の人事

納得のいかない自分の人事として

  1. 降格させられた
  2. 地方(田舎や海外など望まぬ場所)に左遷された
  3. 望まない仕事を担当させられることになった
  4. 昇格・配置替え・担当替えがなかった

の4つがあげられます。

これらが単独で起きる場合もあれば、複合する場合もあります。

 

また、3の「望まない仕事を担当させられることになった」は、部署異動がなくても、担当替えや同僚がやっていた仕事を追加で割り振られる、あるいは、自分が行っている仕事を取り上げられる場合も含みます。

 

4の「昇格・配置替え・担当替えがなかった」は、「今の部署から異動してもらう」と上司から言われたり、自分で「もう、そろそろ異動があるはず」と期待していたのに、実際にはなかったという場合です。

 

 

 他人の人事

他人の人事で納得がいかないケースは、

  1. 自分が認めていない人が昇格した
  2. 自分が認めていない人が出世コースに乗った
  3. 自分が認めている人が左遷や降格された

の3つ。「なんで、あんな奴が?!」という場合ですね。

(3は、「なんで、あの人が?!」となりますが・・・)

 

余談ですが・・・、上の「自分の人事」で記載したことを、私は4つとも経験しました。

私自身、仕事を追加されることは年がら年中ありましたし、降格2回、地方転出、子会社出向(左遷)、昇格お流れが3度に部署の閉鎖も2度経験しました。

はじめて会社を辞めようとしたときの話・・・
はじめにこれまでに、何度か会社を辞めようと思ったことがあります。「もう辞めよっかな」という軽いのから、実際に退職届を書いたときもあります。新卒で入社してから今が丁度30年目、結果的には辞めることなく、また、馘首されることもなく、今日に至って

なぜ、そのような人事となったのか、一応の理由説明は受けましたが、その当時は全然、納得できなかったですね。

 

それと、「他人の人事」で納得いかないことは、年がら年中あります。

「なんで、あんな奴がエラクなるんだ?!」

「ただのゴマすり野郎しか、出世できないのか?」

まさに他人事ではあるのですが、義憤半分、嫉妬心半分というところかと。

 

人事の裏側にあるもの

特に、自分事で納得の行かない人事に当たると、気持ちはすさむものです。

自分の存在価値を否定された気持ちになるし、周りの目もある。給料、仕事内容、社内的立場、住む場所が変わることも。

まさに、人生そのものに大きな影響がありますよね。

 

人事に対して納得がいかない理由はいろいろありますが、中でも

「なぜ、そのような人事になったのか、ちゃんと説明してもらえない(説明内容のスジが通っていない)」

ことがとても大きいと思います。

一方で、左遷や降格などの懲罰的人事は、本人に問題があるケースが多いのではないでしょうか。

その問題がどれくらい大ごとなのか、問題発生時、あるいは、(能力不足の場合は)日常的に、正しく伝えられていれば、本人は覚悟しているでしょう。

でも、問題発生時に正しく伝えられていなければ、いくら異動時に説明されたところで、本人は「嵌められた!」と受け取り、感情的になるのです。

 

 icon-check-circle  人事異動の内示がひどすぎて断ろうかと悩んでいる方はこちらの記事をご覧ください。

そもそも内示とは何か、断ったらどうなるのか、そして、どうすればひどい人事異動を命じられずに済むのかが分かります。

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もちろん、人事異動の説明責任がどこまであるかは会社によって違います。

それでも、少なくとも社員のモチベーションを下げないようにすべきですし、まして、直属の上司が「自分も理由を聞かされていないので分からない」と回答するなどありえないと思っていました。

ところが、実際に自分自身が組織の人事に携わるようになり、その裏側に接することで、ちゃんと説明されなかったり、上司が状況を把握していないのには、それなりの理由があることと分かってきたのです。



会社の都合による人事

組織の要員計画においては、その業務に必要な人材スペックが定義されているものです。

ある部門で欠員がでた場合は、そのスペックを条件にスクリーニングがかけられ、複数の候補者が選ばれます。

そこから、部門(長)同士の駆け引きやら何やらと書き出せばきりがないくらいゴチャゴチャがあって、最後の一人に絞られていくのです。

また、これ以外にも、以下のようなプロセスもあります。

 

ご指名による一本釣り

人事異動の中でも、栄転となるのが「ご指名による一本釣り」。

別組織から優秀な社員を名指しで引き抜くやり方で、本社の有力部門が、地方の組織から、有無を言わせずに取り上げるケースなどがあります。

この「ご指名」で異動となるのは、引き抜きになるわけですから、ほとんどが「ご栄転」になります。

もっとも、引き抜かれる本人がハッピーかどうかは別問題なんですけど。

 

玉突き

続いて一番ポピュラーなのが、「玉突き」です。

基本的には、A→B→C→D→Eのように、「A」の人を何らかの事情で異動させることになって、連鎖的に他の人も異動させられる場合です。

 

人事ローテーションや、新入社員、増員・減員、退職など人員の増減が絡むケースですが、中にはとばっちりで異動となる人も出てきます。

 

トレード

同じ仕事を長くA支店でやっているAさんとB支店でやっているBさんを入れ替え、引き続き同じ仕事をさせる「トレード」

仕事の継続性と本人たちの負担は少ないですけど、似たような人が同じようなポジションをグルグル回るため、異動する本人たちはもちろん、組織的にもあまり活性化されません。

そのためか、中高年社員が対象となる場合が多いですね。

中には三角トレード、四角トレードもありますが、これは「玉突き」と呼んで良いかも。

 

バーター

「トレード」に近いもので「バーター」というのもあります。

Aという優秀な社員と抱き合わせでBという出来の悪い社員を出すというケースで、代わりに受け入れるCは普通の社員で、2対1でのバーター、戦力的にはバランスが取れているというもの。

ただし、有力組織が出来の悪い社員だけを一方的に押し付けるケースもあります。

 

なお、あまりにも出来が悪すぎる社員は、それが評判になって1対1はもちろん、バーターすら成立しないので、同じ部署で塩漬けになるものです。

この人が異動できるのは、組織変更などで人事がガラガラポンされるときか、新設される部署にドサクサで押し込むか、不慣れな人事担当者がだまし討ちにあったときですね。

 

エリートのライン人事

いわゆるエリートが規定路線として異動・出世していくケースで「ライン人事」というのがあります。

この人事は経営層に近いところで決められているので、上直属の上司や上司の上司でも手が出せません。

人事サイクルが3年の会社で、1年単位でいろいろな部署に異動を続けるのは、この「ライン人事」に乗っかっている人で、ある程度の年齢になると異動の度に出世していくものです。

 

人事異動は会社の都合

このように人事異動が決まるまでのプロセスはいくつもあるのですが、異動する本人の意向が反映されない場合が多いのです。

つまり、会社の都合で必要な人事措置を取った結果、お鉢がまわってきたのがたまたま自分だった、ということです。

上司がそれを伝えるときに、「たまたま、君に決まったよ」とは言えないので、もっともらしい理由を伝えるわけですが・・・、これが取ってつけたような理由なので、受け手は納得できないのですよね。

 

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社員の育成

比較的若手社員で将来を期待されている人に、あえて厳しい仕事をあてがったり、辺鄙な場所にある事業所に異動させて、経験を積ませることがあります。

そこで、ポシャったりくさったりせずに頑張り抜けるかをチェックするのです。

場合によっては、新しい風となって組織の活性化や業務の改善を図るかもしれないという期待も持たれています。

将来を期待されるくらい優秀な人であれば、すでに大きな実績を出していますし、その自負もあるでしょう。

 

なので、この手の左遷めいた話がきたときは、

「なんであんな田舎に飛ばされないといけないのか?」

「なんで俺がこんな底辺の部署に行かなければならないのか?」

と不満を持ちます。

 

会社としては「勉強のため、今後の成長のため」と伝えはするものの、「そこで2年間頑張れば、次は本社にご栄転だぞ」との約束はできません。

本人が結果を出さなければ栄転させられませんし、結果を出していてもそのときの人事状況によっては実現できないかもしれません。すると、空手形になってしまいますから。

ということで、これも本人にとって、納得性の低い説明となります。

 



自己評価が高すぎる

客観的にみて、このケースはとても多いですね。

一般的に、他者評価は自己評価の七掛けだといわれています。

それくらい、人は自分のことを甘く評価してしまう傾向があるのです(逆に、自己評価が厳しい人は、それが極端に厳しすぎる嫌いがありますが・・・)。

 

「自分はこれくらいやってきたし、これくらい出来ている。だから、これくらいの評価をしてもらって当然」と考えていても、会社の評価は、その3割ほど下にあるのです。

ですから、「次は当然このポストに昇格」と自分で見積もっていても、端から見れば「何を寝言を言ってるんだ?」となるわけですね。

ほとんどの人間は、自分自身のことをより良く考えてしまうもの、これは「人間のサガ」としか言いようがないのです。

 

「なんで、あんな奴が偉くなるんだ?!」といった「他人の人事に納得がいかない」というのも、裏を返せば、自己評価が判断基準になっているから、と言えます。

いずれにしても、自分自身を客観的に、正当に評価できていないので、どんな説明を受けても納得できないのです。

 

上司がバカ

それこそバカな話ですが・・・、「上司がバカ」というケースも実に多いですね。

 

部下の問題点を放置している

上司が部下の「良いところを褒める」のは素晴らしいことです。人は褒められることでやる気も出るし、成長もするものですから。

しかし、たいして良くない点も含め、なんでもかんでもやたらに褒めまくる上司がいます

なのに、そんな上司に限って、出来ていないところを指摘しない、できるようにする手助けをしないのです。

「褒めて伸ばす」という考え方をはき違えているバカ上司です。

 

コンプライアンス云々で、何かにつけて唇が寒い時代ですから、部下を指導したり、真っ当に叱ることから逃げているのです。

部下の育成のために、必要であれば言いにくいことも言うべきなのですが、それを放棄している上司が多いのです。

 

部下が嫌がることを言わずに、自組織を仲良しクラブに仕立てておけば、その中でのボスである上司は、居心地は良いですからね。

結果、伸びしろのある部下の成長を止めてしまい、一方で根拠なく「自分はすごい」と勘違いさせてしまうのです。

 

部下本人に直すべき問題点があるにも関わらず、上司がそれを放置した結果、その問題点が仇となり、それ相応の人事が発令される。

これは、部下にとっては、当然、納得のいかない人事となりますが、まさに上司の不作為が原因と言わざるをえないでしょう。

 

部下の人事に真剣にコミットしていない

上述の仲良しクラブの長がこの手合いであるケースが多いのですが・・・。

まず、各単位組織の長は「部下の異動先を決める権限」を持っていないのが一般的です。

 

上司が持つ人事権は、部下の仕事の差配と人事考課、そして、CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム=部下のキャリア形成支援)がメインであり、人事異動に関しては、「どこそこに、いつごろ異動させたい」との要望を出すところまでなのです。

 

実際に、異動を決定するのは単位組織を取りまとめる部署であり、会社の規模や制度によっては、さらに上位組織に決定権が留保されていることもあります。

人事異動は複数の部署が絡むため、複雑な調整が必要です。個々の上司が好き勝手に動き回ると、収拾がつかなくなるので、実質的な権限は与えられていないのです。

(もちろん、正式にテーブルに乗せる前に管理職同士で話をつけるケースや、「声のでかい人」が高圧的に介入するケースなんかもありますが)

 

部下の人事で逃げをうつ上司

さて、部下の人事異動に関して上司は要望しか出せません。

しかし、部下のキャリア形成に真剣に取り組んでいる上司であれば、部下にとってより良い異動先を考え、それが実現できるよう人事調整者に必死になって働きかけるものです。

もちろん、その部下はそれに「ふさわしいレベルに達している」ことが前提ですし、そこに至るまで上司は、厳しい指導をしていることでしょう。

 

ところが、そうでない上司は「どうせ、誰かが決めてくれるから」と知らぬ存ぜぬで逃げをうつのです。

そのほうが楽だから。

 

部下の育成を考えないし、キャリアも考えていない、だから、部下をまともに指導しない。

適当に褒めることはあっても叱ることはない、そして、部下がどこに異動となろうと知ったこっちゃない。

こんな考え方、というか、部下のことを考えていない上司がたくさんいるんですね。

なので、こんな上司から異動理由を聞かされても、納得できるわけなどないのです。

 

いずれにしても、上司がバカだと、部下は人事異動で割を食うのみならず、自分の成長の足かせにもなるのです。

 

ただ、逆にその程度の人でが上司であれば、仕事のうえでは手玉に取りやすいともいえますよね。

基本は良い関係を保ちながら、うまく上司をコントロールし、一方で、さらに上司の上司などでちゃんとした人を見つけ、その人と親密な関係を作るように努めればよろしいかと思います。

 

まとめ

「左遷や降格など納得のいかない人事の裏側にあるもの」について、ご紹介しました。

人事異動では、順当な人事もあれば、納得のいかない人事もあります。

そして、それは「理由にならない理由」によって決定されること多々なのです。

そのプロセスを「人事の裏側にあるもの」として記しましたが、不可解な人事を理解する一助となれば幸いです。

 

 

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では、また。