上司として「部下を理解する」ために必要なポイントと把握の仕方

 

部下との関係がうまくいかない、その大きな理由のひとつに「部下のことを分かっていない」ことがあげられます。

部下のことを良く分かっていないがゆえに、適切な仕事の振り付けや指示・指導ができなかったり、コミュニケーションエラーを引き起こしていることが多々あるのです。

そこでこちらでは「部下を理解する」ために必要なポイントと把握の仕方について記します。

 

部下の定型情報

住所や家族構成、学歴、入社以前の社歴などといった部下の個人情報とともに、入社後の経歴や人事評価(考課)といった定型情報は入手できます。

また、会社によっては異動の際に、ちょっとした人物評などが口頭で引き継がれる場合もあるでしょう。

ただし、それらは、あくまで参考情報に過ぎません。

上司であれば、やはり、自分自身の目でもって部下のことを把握すべきなのです。

 

部下について把握すべき事項

部下について把握すべき事項は、「能力」、「性格」、「家庭環境」、「価値観」の4つです。

これらの4つの事項は相互に結びついており、部下に対する理解が深まれば深まるほど、その結びつきも理解できます。

ですから、これらを可能な限り把握し、部下それぞれに適した対応を行うことが望ましいのです。

 

ポイントと把握の仕方

部下を把握するポイントとして「能力」、「性格」、「家庭環境」、「価値観」を挙げました。

上司として、これらをどうやって把握するか・・・。

ここで大切なのは、上司自身が自分の目でもって把握すること、つまり、自分自身が直に接する中でこれらを知る、ということです。

 

「能力」と「性格」

「能力」と「性格」(あるいは「適性」)は、一緒に仕事をしていると、自然と分かってきます。

部下本人の話や行動を直接、見聞きし、そのときの様子などから把握すること、つまり部下と直接、対話することが大切なのですね。

逆に第三者からの情報をうのみにして、その先入観で判断するのは絶対にやめるべきです。

 

噂では「とんでもない奴」と聞いていた人が、実際に会って話をしてみると、全くそんなことはなかった、というケースはザラにあります。

とかく、悪い噂は流れやすいものです。そして、噂の源流には、噂の主を心良く思っていない人がおり、噂の途中には悪意をもった人がいますから、尾ひれがついて回ってくるものです。

 

また、昔しでかした「過ち」が、ずーっと人の口に残るってこともあります。

でも、人は成長するものです。

その当時は、たしかにそうだったかもしれないけれど、今は別人のようになっている、ということも往々にしてあります。

今の部下本人を、上司が自ら把握することが大切なのです。

 

「家庭環境」

部下の「家庭環境」ですが、昨今はプライバシーには立ち入らないという風潮があるため、積極的に聞きにくいものです。

ただ、今現在、部下の家庭の状況がどうなっているかは、仕事への影響がある分、部下本人の心や健康の問題と同じで、とても重要なことなのです。

なので、機会をみて、

仕事に影響しそうなことで、何か心配していることはありませんか?

と尋ねてみましょう。

多くの場合、話をしてくれます。

 

余談ですが、最近、本当に多いなぁと思うのが、「親の介護」です。

たまたま私の部署がそうなのかも知れませんが、部下の7割以上の人が、何らかのかたちで「親の介護」問題を抱えており、そのために、相当の時間と労力とお金を費やしています。

実情を聞くと、本当に身につまされる話ばかりです。

 

家庭の問題は、直接、会社の業務には関係はありませんが、どういう状況なのかを理解して、可能な配慮をするのも上司の勤めだと思うのです。

もちろん、情に流されて、あまりにやりすぎるのは組織としての公平性を保てなくなるのでNG。バランスをもった対応を行うべきですね。

 

「価値観」

そして、「価値観」

具体的には、日々の生活の中で「本人が大切だと考えているもの」と「どんな会社人生を過ごしたいと思っているか」は重要事項です。

「本人が大切だと考えているもの」・・・

能力の発揮・地位・収入・自立独立・安定・チャレンジ・家族・自分の時間・プライド・ライフプラン・・・

「どんな会社人生をすごしたいのか」・・・

どんどん出世したい、仕事はほどほどで今の会社で長く勤めたい、社内の違う部署の仕事をしたい、今の部門でエキスパートになりたい、転勤していろんなところで暮らしたい、スキルを得て早々に転職・起業したい、今の立場を守りたい・・・

上司の対応

これらが分かっていると、上司としての対応は大きく変わっていきます。

  • 「なぜ、部下はそのような言動を取ったのか」
  • 「部下はどのような反応をし、どう行動するだろうか」
  • 「部下は何を望んでいるのか」

が分かるようになります。

そして、部下対応においては、モノの言い方ひとつから、全く違うものになり、本人の希望を叶えられるような差配やバックアップができるようになるのです。

 

単純な例ですが、「仕事はほどほどに」と思っている部下には、プラスアルファの仕事を無理強いせず、やるべきことをしっかりとやり続けてもらえるようにするでしょう。

「成長したい」と思っている部下には、今後のキャリアプランを一緒に描き、ステップアップにつながるような仕事に、どんどんとチャレンジさせるでしょう。

これらはシンプルな例ですが、本人の価値観を把握した上で、それに応じた対応を取ることが大切なのです。

(もちろん、本人の希望を会社として出来ないことは出来ないのですが・・・)

 

気をつけること

そして、その価値観は、本人から直接聞き取らなければなりません。

「もう、いい年だから」、「入社早々だから」と勝手に決めつけ、「だから、こうなんでしょ」と一方的に対応すると、それが部下の価値観に合っていないと、必ず摩擦が生じます。

 

まとめ

部下の「能力」「性格」「家庭環境」「価値観」を把握せずに、自分の考えや思い込みだけで、一方的に部下に指示を出す。

それは往々にして、部下個々人に適した言い方・内容でないため、うまくいかない。

その結果に対して、上司は「何でできないんだ!」と怒鳴る。

怒鳴られた部下は、上司に対して反発する。

そして、人間関係は悪くなっていく・・・。

 

ごくごく当たり前の会社員であれば、まず間違いなく上司とうまくやっていこうと努力します

当然、いろんな我慢もしています。

それでも悪い関係しか出来ないのは、上司が部下を把握する努力をせず、部下の苦労をブチ壊しているからなのです。

部下のことを「仕事ができない」「言うことを聞かない」と嘆くのであれば、その前に、自分自身が部下のことをしっかりと把握できているか、そして、それを踏まえた適切な対応ができているか、自問自答することをお奨めします。