はじめて年上の部下をもったときに上司として意識すべきこと

 

ある程度の社員数がいる会社でサラリーマンをやっていると、否応なく社内で立場の逆転が発生します。

先輩の上司になる、あるいは、後輩の部下になる、ということです。

年功序列がきっちりしていた時代でも、大なり小なり逆転現象はありましたが、団塊の世代がリタイアして以降、この年次の逆転はより頻繁になったのではないでしょうか。

さて、あなた自身が「年下の上司」となったとき、「年上の部下」とどのように接すべきでしょうか?

こちらでは、私自身の失敗談と合わせながら「はじめて年上の部下をもったときに上司として意識すべきこと」をご紹介していきます。

 

年上の部下、年下の上司

私自身、年下の上司に仕えたこともあれば、年上の部下を持ったこともあります。

学生時代と異なり、年齢や入社年次は、ある一定以上のキャリアを積んでくると関係なくなってくるもので、あまり意識すべきことではないのでしょう。

それでも本音を言えば、どちらもイヤなものでした。

 

初めての年下の上司は、以前、同じ部署で一緒に仕事をしていた後輩でした。

彼が上司として赴任してきたときは、正直、やっかみのような感情を持ちましたし、素直に言うことを聞けない自分がいましたね。

 

また、初めての年上の部下は、私がグループ会社へ出向するという人事異動によるもので、同時に2人持つことになったのですが、2人とも、いわゆる役職定年者で一回り以上、年長でした。

現職時代は、そのときの私の役職よりも、かなり上のポジションまで上がっており、それこそ、つい先日まで、(当時の私のような)若僧をアゴで使っていたわけです。

それが、急にその部下になったのですから、おもしろくないに決まってますよね。

礼をもって接していたが・・・

幸か不幸か、年下の上司に仕えたほうが先だったので、年上の部下の複雑な気持ちは、かなり分かっていたと思います。

まずは、気をつけたのが、礼をもって接するということ。

私自身、年長者に対して失礼がないようにと、子供の頃からしつけられていたので、ぞんざいな態度を取ろうとしても取れなかったというのがあります。

 

ですが、それ以上に、年上の部下に対して「お前呼ばわり」する無礼な上司がいて、その人や部下である先輩たちの有様を見ていたのが大きかったと思います。

*この上司は、私よりも年上でしたが・・・。

 

無礼な上司をみて

この上司、今であれば、パワハラで一発アウトの言動をとっていたのですが・・・、はっきり言って、見苦しいとしか言いようがありませんでした。

何かにつけて威張っている様は、小者が自分を大きく見せようとしているようで、まさに自分に自信がないから、虚勢を張っていると見えたのですね。

すると、話すことは正論であっても、「見栄で言っているのではないか?」と素直に受け取れなくなります。

そして、もし問題が起きたら、怒鳴り倒して責任逃れをするのではないかと思えてくるのです。

要は、人間として信用できない、ということですね。

 

一方、何人かいた年上の部下たちは、その無礼な振る舞いに屈辱的な思いで耐えていました。

仕事においては面従腹背、何か問題が起きれば足を引っ張ってやろうと機会を狙っていたのです。

このような人間関係で、組織がうまくいくはずがありません。

他の要因などもあって、しばらくすると、この年下上司は大降格となり、飛ばされていきました。

 

今考えると年齢の逆転だけが問題ではなかったと分かりますが、その当時は思いが至らず、ただ、年長者を蔑ろにし品性の低い言動を取っていたことが問題であると、強くインプットされたのです。

 

礼をもって接する

敬語で話す、命令口調で指示出しをしない、邪険に扱わない・・・。

上司・部下と言えど、それは会社の中の役割上の話に過ぎません。

年上の部下に対しては、自分が年下の人間からされてイヤなことは、絶対にしないように努めたのです。

*それ以前から、いわゆる業者さんに対しては、相手の年齢は関係なく、尊大な態度を取らないように気をつけていました。もっとも、私的にも仲良くなって、相手が年下の場合は、タメ口をきいていましたが・・・。

しかしながら、これは最低限必要なことに過ぎず、やったからと言って、仕事がちゃんと回るものでもなかったのです。

さらに言えば、自分は礼をもって接するように努めても、相手にとっては出来ていないこともあると分かったのです。

 

年上の部下の仕事振り

さて、彼らの仕事振りがどうだったかというと、全く何もしないというわけではありませんでした。やらなければならないことは、渋々ながらもやっていたのです。

ただ、それは常にギリギリ最低限というレベルで、あわよくばその下限を下げようとするのです。

自分のやるべき仕事を他の人間に押し付けようとし、その相手は、彼らの直属の部下であり、私だったのです。

値踏みをしつつ、楽をしようという行動です。

彼らの部下たちは「いいかげん何とかして欲しい」と私に訴えてきますし、それ以前に私自身、たまったものではありません。

そんな状態だったので、クライエントからも、「手抜き」とクレームを受ける始末でした。

 

話し合い、表向きは礼儀正しくしていたが・・・

仕事をしない年上の部下2人と、それぞれと個別に、何度も話し合いをしました。

その際に、私が口にした言葉は、

「どうして、やらないんですか?」

「仕事なんだから、やるべきですよね」

「あなたの部下たちは、困っていますよ」

「じゃあ、どうしたいんですか?」

といったものです。

 

これらは「正論」ではありますが、稚拙としか言いようのない紋切り型の物言いです。

それに対して、彼らの答えは、

「前の人(=私の前任者)は、文句を言わずにやってくれた」

「年を取ると、身体と頭がついて行かなくなるんだよ」

「あんたも、この立場になったら分かるから」

などなど。

 

イチイチ文句を言わず、そっとしておいてくれ、と言うことでした。

こんなやり取りが何度も繰り返され、その都度、「最低限、これだけはやってください」で締めくくっていたのです。

私がこんな物言いをしていたのは、私自身が未熟だったからです。

一方で、なぜ、最低限のことすら他人に押し付けようとするのかが理解できず、「いけしゃあしゃあ」と言い訳する態度には、本音ではむかっ腹を立てていました。

結果、表向きの態度は礼儀正しくしていたつもりでも、中身は出来ていなかったということです。

ケンカ別れ

ある日、よろしくない方(年長者でやる気がまったくない方、Aさんとします)と話し合いをしていたときのことです。

いつものように、のらりくらりと言い訳を繰り返しラチがあかない態度に、我慢できなくなりました。

そして、

「そんなに仕事がイヤなんだったら、もう、会社を辞めればいいじゃないですか」

と言ってしまったのです。

言われた当のAさんは、顔を真っ赤にして、

「気力と体力が続く限り、会社は辞めない」

と言い捨て、その場はケンカ別れとなりました。

この言葉を聞いて、「このオヤジは、一体、何をとぼけたことを言ってるんだ」と思いましたし、「何が気力と体力だ?エラそうに言うんだったら、ちゃんと仕事しろよ」とも思ったのです。

 

あんたももう少し何とかならないか

それから、冷戦状態が続きました。

幸いにも?、年長の部下たちは、私とは勤務場所がそれぞれ別(出先の事業所)でしたので、毎日、顔を合わせずに済んではいましたが、事態は悪いままだったのです。

しばらくして、まだマシな方(Bさん)から、話がしたいと連絡がありました。

開口一番、言われたのは

「Aさんは自分が悪かったと反省している。だけど、あんたももう少し何とかならないか

というものでした。

 

いわく

  • 自分たちは、役職定年によって現職を退いた身である
  • 現職当時に比べ、給料は格段に下げられた
  • 今は、心身ともに楽な仕事をほどよくこなしながら、第二の職場の定年を迎えたい
  • あんたは先があるから張り切るのは分かるが、それを自分たちに押し付けないで欲しい

と。

 

年上の部下たちの置かれて居る状況を理解したうえで、それなりの配慮をせよ、というものです。

いかがでしょうか?

まさに、彼らにとっての本音ですね。

 

一旦、会社を”卒業”している以上、「仕事はほどほどに、平穏無事な毎日を過ごしたい」という心情になって当然だと思います。

本人たちも、そんな毎日が過ごせると思って(それが大きな勘違いなのですが・・・)、グループ会社への転籍を承諾したわけですから。

でも、この心情、他人にしてみれば、理屈では分かっていても、本当に理解し同調できるかと言われると、存外に難しいものだと思います。

上記のBさんの発言を見て、多くの人は「気持ちは分からなくもないが、言ってることは甘過ぎる」と捉えるのではないでしょうか。

 

心情理解のギャップ

心情、本人にとっては正当なものであっても、他人が心底理解したり、受け入れらるとは限らないもの。

このギャップは、コミュニケーションエラーを引き起こす大きな原因になっているのです。

 

キャリアにおいて、相手が自分よりも若い人が相手だと、自分自身が通ってきた道として、その心情を理解しやすいかもしれません。

でも、相手が年長者では、自分自身がまだ経験していない状況にいると、本当の心情は分からないのでしょう。

 

一方、若い人は、先々を考えて自分の心情を押さえ込むことが多いでしょうが、今回の年長の部下のケースは、ある種の開き直りであるため、態度としては非常に分かりやすく表れています。

 

つまり、

  • 若い人の心情は理解しやすいけれど、表に出さないことが多いので気づかない
  • 年長者の心情は理解しがたいのに、行動だけが見えるため納得できない

ということです。

 

そして、心情を理解できたとしても、どこまで寄りそうか、あるいは、情に流されることなく対処できるかは、本当に難しいことです。

それでも、年齢や立場は関係なく、人と接するときは、礼をもってなすのとともに、心情理解に努めることが大切なのだと言えます。

私自身、これらは、今にして思うと、なのですが・・・。

 

おまけ

さて、事の顛末です。

Bさんの指摘に対して、私が答えたのは、

  1. 2人が置かれている状況は理解するけれども、だからと言って、自分がやるべき仕事をやらずに済まされるものではない
  2. それぞれの仕事は、クライエントから決して高い評価を得ておらず、いつ何時、切られるか分からない
  3. そうなると、若い社員たちの仕事がなくなる(つまり、職を失うのはあなた方だけではない、ということ)
  4. この状況を理解したうえで、やるべきことをしっかりとやってもらいたい

と言ったものです。

 

これを言っても、すぐに何とかなるものでもなく、以降も、何度も話し合いを行いました。

あわせて、筋の通らないことには一切譲歩しませんでした。

すると、やがて、あきらめたのでしょう、2人とも露骨な「わがまま」は言わなくなりました。

仕事振りは相変わらずでしたけど。

ということで、結果はかろうじて「オーライ」となりました。

 

でも、「あの物言いは間違っていた。もっと配慮できていた」と忸怩たるものが多々あります。

それらは、後になって思えることなのですが・・・。