自分のことを、どこまで知っていますか?
「何であんなことをやってしまったんだろう」
「どうして、あんなことを言ってしまったんだろう」
自分で取った言動なのに、なぜそうしたのか、自分でもよく分からないときってありませんか?
「良くないこと」と思っているのに、どうしてもやりたくて仕方がない・・・。
それを「悪魔のささやき」と呼びます。
そして、悪い結果となったときには、「魔がさした」と思うわけです。
でも、それを行ったのは紛れも無いあなた自身なのです。
悪魔ではない自分の中にある「なにか」が、あなたを突き動かしたわけですね。
さて、良い・悪いは別にして、人は自分自身のことを、知っているようであまり知りません。
上に述べたようなことも、突き詰めれば自分の中に理由はあるのですが、それを自覚できていないから、まるで第三者に誘導されたような気持ちになってしまうのだと思います。
自分を知るためには、様々な検査手法がありますし、一番良いのは「ちゃんとしたカウンセラー」と話をすることだと思います。
でも、もっと手っ取り早く自分を知る方法があります。それは、そばにいる人からあなた自身のことを聞くことです。
「ジョハリの窓」とは?
「ジョハリの窓」と呼ばれているものがあります。
ジョセフ・ルフトさんとハリー・インガムさんという2人の名前を組み合わせて名づけられた「対人関係における気づきのグラフモデル」のことです。
図のように、人には自分が「知っている・知らない自分」と、他人が「知っている・知らない自分」の4つの領域がある、ことを示しています。
「悪魔のささやき」は、自覚できていない自分、つまり、「ブラインドの領域」もしくは「アンノウンの領域」に存在する自分によって引き起こされているものだといえるでしょう。
「 ジョハリの窓」の持つ意味は?
対人関係においては、「パブリックの領域」が広がれば、お互いに相手のことをより良く知るということですから、相手を理解しやすく、合意形成が図りやすく、結果、共同で行動しやすくなる、というものです。
そのためには、相手に自分を「知ってもらうこと(開示)」と、自分のことを相手から「知らせてもらうこと(=フィードバック)」が大切だと言えるのです。
これによって、今まで知らなかった自分を知ることができるのです。
「ジョハリの窓」の戦略的活用
ここまで述べてきたことは、いたって「教科書」的な内容です。ここで終わってしまうのはつまらないので、さらに一歩踏み込んだ具体的な活用方法を記したいと思います。
準備
まず、最初にやるべきこと、それは「自分自身のたな卸し」です。
自分とはどういう存在なのかを、しっかりと整理しておく必要があります。
その際、自分でもよく分からない「自分」というものに気づくはずです。
いわゆる「ケースバイケース」で、考え方や行動が変わるけれども、ケースと行動の関係性がよく分からない場合ですね。
その際は、「このケースのときはこうするけれど、あのケースのときはああする」と具体的に記録しておきましょう。
信頼できる友人と行う
行うべきは、
「自分で知らない自分に気づくために、相手が知っている自分のことを教えてもらう。そのためには、初めに自分自身のことを話す」
ということです。
いきなり、「あなたが知っている私のことを正直に教えてほしい」と言っても、なかなか簡単に話してくれるものではありません。
人から話を引き出すには、自分から自己開示しないと無理なのです。
そして、その際は、あまり言いたくないことも言わなければならないとの覚悟が必要です。
そこで、信頼できる友人、それもできるだけ、同じ会社で、あなたの仕事っぷりや社内での立ち振る舞いを知っている人にお願いしましょう。
相手は嫌がるかもしれません。「正直に話したら傷つけてしまうかもしれない。そうなると人間関係がおかしくなる」って思うでしょうからね。
でも、あなたが自分の弱いところ、場合によっては”恥部”までさらけ出して、「自分ではこう思うけど、正直、どう?」って聞くのです。
そこまで自己開示すると、信頼できる友人ならば、きっと真剣に答えてくれるはずです。
そして、自分では気づかなかった自分のことも、教えてくれるでしょう。
また、その際は、たな卸しのときに見つけた「自分でよく分からない自分」について、ストレートに尋ねてみるとよいでしょう。
さて、友人が教えてくれた内容は、必ずしも正しいとは限りません。
また、表現の仕方も、常識的に考えれば、実像よりも「キレイな言い方」がされていると思って間違いないでしょう。
ただ、言われた内容は事実なので、しっかりと受け止めるべきです。
上司と行う
ここからがメインテーマその1です。
あなたの会社生活における最大のキーパーソンである「上司」。
その上司からあなたのことを教えてもらうということは、自己理解ができるのとともに、上司によるあなたの評価を、本音ベースで知ることができるのです。
そして、あなたが上司のことを、より一層、知る機会にもなります。
まず、自己理解ができるということは、ご理解いただけると思います。
話される内容は客観的に受け入れるべきですが、その際「上司の目から見たあなた」が語られているということを強く意識したいです。
つまり、上司から発せられるコメントは、あなたが知ってる・いないに関わらず、上司が良い悪いを評価した結果である、と考えるべきなのです。
自分を知るとともに、良い点は伸ばす、悪い点は直す、その心構えで話を聞いてください。
そして、そのコメントの裏側にある、上司はどういう視点であなたを見ており、どういう評価軸で判断しているのか、を見出すようにしてください。
これだけでも、あなただけに限らず、部下に対する上司の見方が随分と分かってきますので。
あわせて、時折、上司に対して、上司自身のことを質問してみてください。
人の話を聞かされ、それに対して論評を続けていると、誰でも自分のことを話したくなるものです。
まして、上司という立場、自分のことをより大きく見せたいという欲求は間違いなく膨らんでいます。
そこをうまく、くすぐってあげるのです。
まぁ、上から目線で自慢話をされるでしょう(笑)。
癪に障ることもあるでしょうけど、それを我慢して聞いていると、ベラベラと驚くくらい自分の話をしてくれますよ。
あまり調子に乗ってしゃべりすぎているようであれば、軌道修正をすればよいので、とにかく聞き、質問し、そして、自分のことを話す、これを繰り返しましょう。
会話の中には、たくさんのヒントがありますし、何より、話し合いが終わったとき、上司のあなたに対する信頼度は大きく高まっているはずです。
自己理解、上司のあなたに対する評価と部下に対する評価指標、上司の考え方、あなたに対する信頼・・・。
一石四鳥、五鳥ですね。これは、やらない手はありません。
会社のライバルと行う
メインテーマその2、思い切ってライバルにお願いしましょう。
得られる効果は、上司と同じく、ライバルの考え方や、あなたに対する評価、そして、もしかしたら、ライバル関係とは別の友情めいた関係を得られるかもしれません。
さて、ここで重要なのは、「開示する情報の選別はしっかりとおこなうこと」です。
言っても良いことと、黙っておくことを、事前に区別しておくのです。
ここに至るまで、自分自身の自己評価、親しい友人の意見、上司の評価と、あなたは相当、幅広い自己認識を得ています。
これらをライバルに対して、全て話す必要はないのです。
もちろん、話すべきことは正直に話しましょう。そうでないとライバルは、正直に話してくれませんからね。
でも、話す必要のないことは話さない。
話さないからと言って、相手を騙すことにはなりませんし、逆に、下手に話すことによって、相手に弱みを握らせかねないですから。
もちろん、ウソを言ってはいけませんが・・・。
そして、場合によってはライバルから、「自分もやりたいので話して欲しい」と言ってくるかもしれません。そうなれば、相手の心の内面を見ることができるかもしれませんね。
まとめ
「ジョハリの窓」を使って、自分を知ることと、相手を知ることにつなげる具体的な方法を記しました。
会社のライバルに差をつける必要はない、あるいは、上司やライバルに話を聞くのはハードルが高いと思われるのであれば、まずは、自分でたな卸しをする、そして、親しい友人に話を聞いてみてください。
それだけでも絶対に、新しい気づきがあります。
何事もそうですが、
「やろうと思っているだけでやらないのは、何もやっていないのと同じ」
です。
やったものだけが得られる気づきを、是非、手にしてください。
これによって、確実にライバルと差をつけることができますよ。
では、また。