人事評価(考課)。
会社に勤める者にとって、人事評価は、本当に切実な問題です。
人事評価の結果は、あなたの給料やボーナスの額に直接結びついていますので、短期的な生活の質に直結しています。
あわせて、中長期的には、人事評価によって、あなたが今後、どのような仕事に関わるのか、いつ昇格し、いつ昇進できるか、最終的にはどこまで出世できるかに大きく影響していきます。
まさに、会社員としてのあなたの人生を大きく左右する人事評価(考課)ですが、これがほぼ確定するのが「評価面談」という場なのです。
通常、人事の評価面談は、半年または1年ごとに、上司と一対一で行われます。
面談では、期中の仕事を振り返り、何が出来たか・出来なかったかといった仕事の結果や、どのような行動を取ってきたかと言うプロセスなどを確認し合い、その内容をベースに上司はあなたの評価を確定させます。
もう済んでしまった過去のことを話し合うわけですから、結果については良くても悪くても変えようはありません。
しかし、評価面談の乗り切り方によって、人事評価の結果そのものを変えることは十分に可能なのです。
本エントリーでは、より良い評価を勝ち取るために、評価面談を乗り切るポイントを記していきます。
私・管理人は、某メーカの人事部において長く人事評価制度や人員配置の業務を担当し、また、15年以上の管理職経験を通じて、のべ1000名以上の社員の人事評価を行ってきた実績があります。
こちらで紹介する情報は、人事評価の表も裏も知る立場で得てきた知見ですので、きっとあなたの役に立つはずです!
上司が行う評価とは
評価項目
人事評価は、概ね以下の3つの大項目について行われます。
- 成績 (仕事の成果、仕事の質と量)
- 情意 (自覚、意欲、行動、・・・)
- 能力 (知識、技能、判断力、・・・)
各項目はさらに細かく区分されており、上司は各々の評価項目について「得点付け」を行い、その得点の合計が人事評価の結果となります。
これによって、短期的にはボーナスの額や昇給額が決まり、中長期的には担当する業務と昇格・昇進が判断されていきます。
詳しくは、こちらの記事をごらんください。
◆人事評価(人事考課)の方法は?誰がどんな項目をどんな基準で行っているのか裏側をご紹介
評価の仕方
各評価項目の「得点付け」には、一定の評価基準が設けられています。
売り上げ高のように数値化できるものは「対前年10%以上アップで5点」と評価基準が明快です。
一方、意欲や行動のように数値化できないもの、例えば、「困難な状況でもあきらめずに取り組んだか?」といった姿勢を問われる項目では、評価基準を明確にできませんので、感覚的に得点をつけざるを得ない面があるのです。
評価上のブレ
上司が感覚的に得点をつける項目では、どうしても評価上のブレが発生します。
具体的には、
- ハロー効果 ある特性に引っ張られてほかの特性も同様の評価をする
- 論理的誤差 評価項目に関連があると考えたほかの項目に同じ評価をする
- 中心化傾向 評価結果を「普通」に集中させる
- 寛大化傾向 実際以上に良い評価をする
- 近接誤差 評価を付ける時期に近い行動や成果を強く評価する
の5つが原因となって、評価のブレが起きてしまいます。
詳しくは、こちらの記事をごらんください。
公平・公正な評価を行うためには、このブレをなくすことが大切です。
そのために上司が取る一番手っ取り早くて確実な方法は、部下の相対評価を行うこと、つまり、項目ごとに部下の順位を付けることなのです。
評価基準が明確でない項目について、A・B・Cの3人の部下がいたら、それぞれ相対評価を行い、A>B>Cと順位をつけます。
この順位をもとに、Aが4点だったら、Bは3点、Cは3点か2点と得点付けするのです。
これによって、評価の整合性と全体的なバランスを取るわけですね。
評価面談で正しく理解してもらうことの意味
上司は、組織運営と部下の育成の観点から、日常的に部下の行動と仕事の成果をチェックしています。
しかし、部下全員のすべてを把握できているかというと、絶対にそんなことはありえません。
現実的には、部下が行っていることで知らないことのほうが多いのです。
上司は業績のように数字で出ている事実は把握しているものの、その途中経過は完全に把握できておらず、まして、その過程における部下の情意や能力については、ほとんど知らないと言っても過言ではありません。
自分の努力や熱意を上司が「知らない」ことで正当に評価されないのは、部下の立場からすれば、馬鹿らしいですよね。
だからこそ、上司が把握しきれていない事項は、しっかりと理解してもらうよう部下から働きかけることが大切であり、日常的な「報連相」が重要なのですね。
そして、人事評価の面談という場において、あらためて自分自身の仕事を「正しく理解してもらう」ことが重要となるのです。
評価面談の場であなたの仕事を正しく理解してもらうことで、自分の評価を正しく高めることができます。
そして、ビジネスパーソンとしてのあなたの将来を明るいものとすることができるのです。
評価面談で最も重要なのは「事前準備」
人事評価面談をうまく乗り切るために最も重要なのは、
「事前準備」をしっかりと行うこと
です。
「上司は、あなたの仕事ぶりで知らないことがたくさんある」ことを前提に、あなた自身を「正しく理解してもらう」ための材料をしっかりと準備しておきましょう。
個人目標の振り返り
具体的にどのような準備をすべきか?
まずは、評価対象となる期間での自分の個人目標を、しっかりと振り返っておきましょう。
いうまでもなく、人事評価の最大のポイントは、個人目標の実行度合いですので。
個人目標を達成できたか、できなかったか。
出来たのであれば、何をどう工夫し、どこに力をいれたか、それがどう効を奏したかをしっかり説明できるように整理しておきます。
さらに大切なのは、目標を達成できなかった事案の説明です。
結果未達成ということは、うまく行かない日々を過ごしているわけですが、その間にあなたが何をどう工夫し実行したかをまずは理解してもらうこと、その上で、うまく行かなかった理由を分析し、「この部分が十分ではなかったので未達成となった。だから次回はこうする」との具体案を示すことが大切です。
この、達成できなかった目標に対して、あなたがどう取り組んだのか、そして、それをどう分析し、次の展開をどうしたいと考えているかを理解してもらうことは、達成できたことの説明とは比べモノにならないくらい大切です。
というのも、このことによって、「失敗」に対するあなたの姿勢と対応能力が推し量られ、あなたのビジネスパーソンとしての「器」が評価されるからです。
結果はうまくいかなかったけれど、それを挽回してあまりあるチャンスなのですね。
組織貢献も評価してもらう
次に大切なのは、自分が組織に対してどう貢献したかを整理することです。
特に「個人目標を達成できなかった」場合、上司からは「上半期は出来なかったよね」とマイナスの突っ込みばかりになる可能性があります。
そこで黙ってしまうと非常によろしくない評価をされてしまいます。
また、前述の通り、あなたがどんな思いでどんな行動を取ったのか、上司はほとんど知りません。
中でも、組織に対してどんな貢献をしたのかは、あまり表に出てこないことが多く、その行動の結果があなたの個人としての成果に直結しない場合もあるため、上司が把握できていない可能性が非常に高いのです。
そこで、
「自分の目標は残念な結果だった。でも、組織に対してこれだけ大きな貢献をした」
とアピールするのです。
これは、かなりの効果が期待できますよ。
面談の準備をすることの意味
評価面談に向けて事前準備をすることは、以上のように、あなた自身を「正しく理解してもらい、正しい評価を得る」ことが最大の目的です。
それとあわせて、あなたが
- 「何でも言いなりになる人間」と思われるリスク
- 面談時に「逆ギレ」してしまうリスク
を軽減してくれる意味があります。
言いなり人間と思われると大損
前段で述べたように、人事評価では、部下同士の相対評価がなされますが、それとは別に、会社全体としてバランスを取るため、評価の調整も行われるのです。
例えば、会社業績がプラスマイナス・ゼロの場合、社員の評価でプラスが3人だったら、マイナス評価も3人にする、といったことを行うのです。
(会社の業績が上がっていないのに、全員の評価がプラスになるのは、理屈が合わないですから)
一方、上司は自分の部下にプラスの評価をつけたがるものです。
*なんと言っても、部下の評価は上司自身の評価と直結していますので、プラス評価の部下が多いほど、自分の評価が上がりますし、逆にマイナス評価の社員が出ると「上司の立場で、その部下にどんな指導をしたのか?」と上司はその上司から叱責されますからね。
プラス評価になる人を先にどんどんと決めていき、マイナス評価にする人は後で検討・調整するのです。
例えば、9人の部下に、プラス3人、イーブン3人、マイナス3人との評価配分することになったとしましょう。
「A・B・Cの3人は絶対プラス評価にしたい。マイナスはD・Eの2人は確定。さて、後ひとりのマイナス評価をF・G・H・Iの誰にするか・・・」
悩むのは、ほぼイーブンの4人の中から、無理やりマイナスを付ける人を誰にするか、ということ。
こんなとき、人は無難な人選を行うもの。「後でこじれるのはイヤだから、あまり文句を言わないFにしておこう」と考えがちなのです。
こうやって、文句を言わない=自己主張をハッキリ行わない人は、低い評価をつけられるリスクが高まります。
日常的に文句を言うと上司から嫌われます。
でも、評価面談で自分の実績をしっかりと主張しておかないと、正しく理解されず、かつ、文句を言わないから適当にあしらって大丈夫だろうと判断されます。
結果、大損を食う可能性が高まりますので、これは絶対に避けるべきですよね。
だからこそ、評価面談の事前準備をしっかりと行って、正しく主張すべきことを主張することが大切なのです。
逆ギレリスクとは?
個人目標が未達成のときは、人事評価の面談で上司から、
「ここダメ、あれダメ、ああしろ、こうしろ」
と言われ放しになることもあるでしょう。
残念ながら目標未達成である以上、突っ込みどころはたくさんあるでしょうから、ね。
はじめのうちは、
「言われていることは事実、でも、そこまで言わなくても・・・」
と我慢していても、上司がさらに追い討ちをかけてきたら、
「まだ言うか?しつこいな!」
と、本当にムカついてきます。
そして、言われっ放し状態についに我慢できなくなったら、開き直り、逆ギレを起こしかねません。
そうなると、面談の場で上司と感情的に対立してしまいますよね。
しかし!逆ギレしたところで状況は悪くなるだけ。
後々の上司との関係にも悪影響を残すのは間違いなく、まさに、自分で自分のクビを絞めるようなものです。
これだけは絶対にやめましょう。
そこで、大切になってくるのが事前準備です。
目標が未達成であっても、主張すべきネタを持っていると、その話に持ち込むことで、あなた自身にとって前向きな展開に切り替えられます。
少なくとも、上司から言われっぱなしで、何も言い返せない状況とはならないでしょう。
評価面談で言われっぱなしになったあげく逆ギレしないためにも、アピールすべき事項を事前準備しておくことが大切になるのですね。
おすすめ
面談の場を「友好的」にする工夫
人事評価の面談は、あなたの今と将来を賭けて、上司と真剣勝負を行う場と言えます。
でも、面談そのものは、できるだけ友好的な雰囲気で行いたいもの。
日ごろから上司と仲良くしておくと、自然と友好的な面談になりますが・・・、仮にそうではなくても、少なくとも敵対的な状況は避けるべきです。
そのための工夫として、多少、小手先のテクニックとなりますが、以下のことをやってみてはいかがでしょうか?
座る位置は対立を避けるように
面談の際、下の図1のようにテーブルをはさんで真正面に座るケースが考えられます。
この真正面に相対する座り方は、「対立」を助長する位置関係ですので、必ず避けるようにしてください。
可能であれば、図2-1のように直角の位置で座りましょう。すると親近感を高めることができます。
これが難しければ図2のように、上司に向かって左側にずれた位置で座ると良いでしょう。
少なくとも、真正面で相対するよりは対立関係を回避しやすくなりますので。
共有資料を用意する
評価面談では、自分自身について知ってもらいたいことを資料にまとめて、上司との間に置き、一緒に見るようにすると良いでしょう。
資料自体はこと細かに書く必要はありません。
サマリー、または、「目次」程度で、話したい各テーマとその最大のポイントを大きな字で箇条書きにしておくのです。
この資料の効果は、「あなたが話したいことが一目で上司に理解してもらえる」ことと、両者の間にものを置くことで、対立関係を緩和できることにあります。
面談中は、両者の目線は手元にある「共有の資料」に注がれながら話し合う時間が増えます。
これによって、上司とあなたが「共同の作業」を行うこととなり、かつ、仮に意見が相反する状態になっても、あくまで手元の資料のテーマが議論の対象であって、あなた個人が直接、攻撃される対象になるリスクを抑える効果があるからです。
特に期間の成績が良くなかった場合、上司の攻撃の矛先を「共有資料」に向けさせることができるので、ぜひ、用意しましょう。
(この資料を机の上で共有するとき、お互いに指差ししたり、書き込みをすることがあります。右利きの人は、資料が自分の右側にあるほうが扱いやすいですよね。なので、上の「図2-2」のように”上司に向かって左側にずれる”と、上司もあなたも右手が使いやすくなるのです。もし上司が左利きならば、あえて、”上司に向かって右側にずれる”配慮をすると良いですね)
ただし、会社によっては「評価面談用のシート」があって、それで話し合いをするケースもあるでしょう。
その場合、共有資料を別に出すと「やぶ蛇」になりかねませんので、やめておきましょう。
上司を褒める
人間、誰しも褒められたら嬉しいもの。それは上司とて同じことです。
なので、チャンスがあれば上司を褒めておくと良い人間関係をつくれます。
が、だからと言って評価面談の席上で、上司を露骨に褒めるのは考えもの。
ヘタに褒め過ぎると、評価を上げたいという下心がバレバレになりますから、ね(笑)。
そこで、おススメしたいのが、自分の成果をアピールしながら、上司を褒めるというやり方です。
良い結果を出せた項目について、「何をどうやったから、良い結果を出せた」と説明する際に、上司の関与を語るのです。
直接、手伝ってもらったのならそれをストレートに伝えれば良いです。
特に手助けがなかった場合は、
「日頃からの上司のXXというアドバイスを思い浮かべて、それをヒントに取り組みました」
と、感謝の言葉とあわせて言うのです。
すると、上司は内心ニンマリとなります。
かつ、自分が関与した結果ですから、点数は甘くなりますし、もちろん、あなたの評価に対する全体的な心象も良くなるのです。
けっこう、ずるいやり方ではありますけど(笑)、評価面談を「友好的な場」とするためには「友好的な手段」です。
管理職が行う人事評価の裏側をご紹介しています!
意地にならない・キレない
意地になる・キレる。
評価面談の席に関わらず、これらは、上司に対して絶対にやってはいけないことです。
自分の意見が通らないからと言って、意地になって自己主張し過ぎても、何も良いことはありませんし、まして、キレたりすると、ビジネスパーソンとしての未来が台無しになることさえありますから。
仮に、個人業績が悪く、至らなかった点を一方的に攻められたとしても、そこは我慢して話を聞くようにしましょう。
よっぽどヒドイ上司でない限り、ひとつくらいは、今後の仕事上のヒントを言うはずです。
ヒントも何も、建設的な意見が何一つないようでしたら、
「ご指摘されていることは、どうすれば、出来るようになれるのでしょうか?」
と逆に質問するのです。
この質問が出ると、上司としては、一旦、攻撃の手を緩めて、考えざるを得ません。
そして、上司として何らかの回答を述べなければならず、さらに言ったら言ったで、その回答に対して「言った(=指示した)責任」が発生します。
すると、面談のテーマを、あなたへの攻撃から、どうすれば出来るようになるかに変えざるを得なくなり、攻撃モードから、本来、上司が取るべき建設的モードになるはずです。
もしかしたら、「そんなことは自分で考えろ」と無責任に言う上司がいるかもしれませんね。
その場合は、「では、先輩のXXさんに相談してみます」とか、「がんばって考えますので、後日、あらためてご相談させてください」など時間の猶予が必要な答えを返して、その場を切り上げるようにしましょう。
最後に
給料やボーナスの額を決定するのはもちろん、ビジネスパーソンとしての将来に大きな影響を与える人事評価。
評価面談は、あなた自身を正しく理解し、より良い評価を行ってもらうための大切な場です。
そのためには、入念な事前準備をもって、かつ、友好的に面談に臨むことが大切です。
本エントリーをヒントに、より良い評価を勝ち取っていただければ幸いです。
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それでは、また。