部下に成長してもらうために、上司としてなすべきこと

 

部下の成長こそが、上司の最大のよろこび

上司という立場にとって、人を育てることは、最もやりがいのある仕事だといえます。

部下に立派に成長してもらうべく、指導する、支援する。

時に見守り、時に突き放す。

様々な対立があり、諍いがある。

上司として、常に葛藤が付きまといます。

「本当にこのやり方でいいのだろうか?」と。

それでも、日々のちょっとした言動から、部下の成長を実感し、喜びを感じる。

 

そして、部下が大きな壁を乗り越え、「一皮むける」「化ける」ときがきます。

この瞬間こそが、まさに「上司冥利に尽きる」を実感するときだと思います。

一度でも、部下の劇的な成長振りを目の当たりにすると、もう病みつきになってしまうでしょう。

部下に成長してもらうことは、それくらいやりがいのある仕事なのですが、だからゆえに、本当に難しいものだと思います。

 

現実的な部下の成長支援とは

がっぷり四つで部下の成長支援に取り組むということは、メンター、いわゆる「師匠」的な立場になることを意味します。

これには、上司の育成スキルと共に、実に大きなエネルギーが必要です。

 

部下個々人の「能力」や「性格」、「価値観」に合わせた育成プランをつくり、具体的な業務を与え、OJT(仕事を通じた訓練)を行うわけですから。

育成対象となる部下が1人か2人であればまだしも、5人、10人となると現実的には不可能です。

やはり、ここは実状に合わせた形で、組織として取り組むのがよいでしょう。

 

具体的には、すでにある組織の中の階層に基づいて、各々が「メンター」として、後進の育成を行うような仕組み作りをすることです。

おそらく、ほとんどの会社で、すでにこの方式を採用していることと思います。

(そして、ほとんどの会社で、うまく機能していないと思うのですが・・・)

 

あなたが課長だとして、所管する組織の中には階層があるでしょう。

あなたをトップに、係長・主任といった役職もあれば、ベテラン・中堅・若手といった年齢層もあり、仕事上のグループにおける役割などもあるでしょう。

その中で、「誰が誰を育成する」というのを決め、実行していくのです。

ここであなたがやるべき仕事は、

 No.2である係長のメンターになる

ことです。

 

具体的には、

  • 「誰が誰を育成するか」を決めること
  • 各育成担当者に「どう育成するか」を計画させること
  • 各育成担当者に「実際に正しく行っているか」確認させ、是正させること

を、係長に行わせるのです。

 

人材育成に関する組織全体のマネジメントを係長がしっかりと行えるよう指導することが、課長であるあなたの「部下の成長支援」業務になります。

要は、係長に課長の仕事ができるように育成する、ということですね。

 

これだけは気をつけたい3つのポイント

その際に、気をつけるべきポイントは3つあります。

メンターとして常に関わる

一つ目は、「係長に権限委譲はする、けれども、丸投げするのではなくメンターとして常に関わる」ということです。

繰り返しになりますが、係長に課長の仕事ができるようになってもらうことが、あなたの仕事の目的になります。

 

係長への指導・支援はきっちり行うべきであり、そのためには履行確認、つまり、あなたの組織内での人材育成の状況がどうなっているか、常に自分自身の目で確認しておく必要があるのです。

そして、もし仮にうまくいっていなかったとしたら、係長に対して指示・指導を行い、最終の結果責任はあなたが取らなければならない、ということです。

係長のせいにはできませんよ、ということです。

 

口を出さない

二つ目は、「口を出さないように我慢する」ということです。

まず、あなたの育成対象である係長は、おそらく、初めからスムーズにできないでしょう。

それを見ていると、ついつい口出しをしたくなりますが、ギリギリまで我慢すべきです。そうでないと、係長は成長できませんし、やる気を削いでしまいかねませんから。

 

次に、主任以下の育成担当者に対して言いたいことがあっても、あなたが直接、指導してはいけません。

頭越しをされた係長の立場がなくなりますし、言われたほうも課長と係長との板ばさみになって困りますから。

係長に状況を聞き、そのうえで、是正案を考えさせ、実行させることが肝心です。

疎外感を我慢する

三つ目は、「つまらないなと思っても我慢する」ということです。

部下の成長を支援する仕事で一番楽しいのは、

「やる気があって、伸びしろの大きい若手を指導し、その成長を見守る」

ことは、ご理解いただけると思います。

ところが、対象である係長は、普通に考えれば、すでにある程度のレベルに達している人です。なので、なかなか教え甲斐を感じにくいんですよね。

 

人によっては、素直に喜ばなければ、感謝もしてくれません。むしろ、「小姑みたいに口を出さないで欲しい」って言いかねませんから。

それと、この「人材育成」の仕組みは、係長を中心として組まれています。

主任以下のメンバーは、係長のほうを向くこととなり、あなたは”蚊帳の外”扱いとなります。

これは、寂しいものです。

だからこそ、ついつい、口出しをしたくなるのですが・・・、我慢するのです。

そういう意味でも、最後の三つ目「つまらないなと思っても我慢する」が、一番ハードかもしれません。

 

おまけ

もしかしたら
「係長を育成して力を付けられたら、オレの課長ポストを盗られるじゃないか!」

という風に思われるかもしれません。

が、そんなケチくさいことを考えるのは、やめましょう。

 

メンターとして、係長を課長相当という自分と同格レベルに育て上げるということは、課長以上の立場がやっておかしくない仕事ですからね。

それを立派にやり遂げるということは、課長より一段上の仕事をしたということであり、かつ、結果として組織全体のパワーアップが図られているわけですから、良い評価を得られるに決まっています。

 

逆に、そもそも、部下の育成を出来ない人は、いつ、課長職を解かれてもおかしくないですから、そちらのほうに危機感を持たれた方が良いかもしれませんね。