この4月に新卒で社会人になる予定の方へ。遅ればせながら、内定、おめでとうございます。
大学生の方は、昨年に引き続き、売り手市場といわれた就職戦線でしたが、それでも厳しい活動を続けられたことと思います。
今期は、スケジュールの前倒しがあったので、混乱も多々あったようですね。
外資やベンチャー系企業が早期に内定を出していましたし、協定に参加している企業でも、リクルーターによる実質的な青田買いが横行していたようですので、様々な噂話が飛び交って、精神的にもきつい日々を過ごされたことと思います。
本当にお疲れ様でした。
そんな日々を乗り越え、4月から入社される方々に対して、こう言ってしまっては、身もフタもないのですが・・・、ひとつのアドバイスとしてお伝えしたいことがあります。
それは、
「会社は理不尽なもの」
と、覚悟しておいていただきたいということ。
この覚悟が出来ているか、つまり、事前に「会社は理不尽なもの」と知っているか、そして、割り切れているかどうかで、会社人生の方向が大きく変わると思うのです。
以下、個人的に考えるところを記したいと思います。
入社3年で会社を辞める
入社して3年以内に会社を辞める人が増えているとのデータがあります。
高校・短大卒で40%強、大学卒で30%強のようです。
なぜ、辞めるのかについて、企業サイドからは、
「最近の若者は辛抱がたらない」
との意見が出ています。
たしかに、そういった傾向はあるのかもしれませんが、私は年功序列がなくなりつつあり、ひとつの会社に長くいるメリットが低下していることとともに、以下が、大きな理由であると思っています。
- 学生のレベルが上がった
- 人事部がウソをついている
- 第二新卒という労働市場が出来上がった
学生のレベルが上がった
少々古いですが、バブルを境に、採用のあり方が大きく変わりました。
バブル期までは、会社も学生も今とは比べものにならないくらいのんびりしていました。
一社あたりの採用数は今より多かったはずですし。
その頃までは、まだまだ終身雇用・年功序列制度が幅を利かせており、企業は、
「ある一定水準をクリアしていて、色が付いていない学生を大量に採用し、社内教育をもって育てていく(中には当たり外れもあるとの前提)」
という考えが強かったのです。
ところが、バブルがはじけて、制度の崩壊やらリストラによる組織のスリム化を経る中で、企業は、
「優秀な人材を厳選して採用」
する方向に傾いてきました。
SPIやTOEICなど客観的統一指標の導入などは、その例と言えますね。
これは、それまでだったら入社できていた学生が入れなくなったということ、いわば「会社の入社難易度が上がった」ということです。
結果として、同じ会社に入ってくる学生のレベルがあがってきた、と言えるのです。
人事部がウソをついている
人事部の採用担当の使命は「良材確保」ですから、まずは学生に「入社してもいいな」との良い印象を持ってもらう必要があります。
リクルーター達を含め会社サイドは、
「良い面だけを誇張して伝える、悪い面は言わないが、もし聞かれたら控えめに伝える」
ようにするでしょう。
ずっと以前から、こういうことはあったはずですが、入社する学生の質を高めるために、誇張の度合いは、より顕著になっていると思われます。
これをもって、「ウソをついている」と断定するのは、言い過ぎかもしれません。
ただ、「良い面」が、聞かされた学生には当てはまらない話だったとすれば、彼・彼女にとっては、ウソをつかれたことになりますので。
第二新卒という労働市場が出来上がった
これは、ニワトリが先か、卵が先か、の話になりますね。
企業と学生とのミスマッチ
企業と学生とのミスマッチは、以下の流れで起きてしまいます。
- 人事部の担当者は、「うちの会社に入ったら、こんなにスゴイ仕事ができるよ!」と、従来の社格では採用できなかった優秀な学生を取り込もうとします。
- 学生は、スゴイ仕事への意欲を持ち、「よし!この会社に決めた!」と決意、入社後の夢を膨らませていきます。
- ところが会社としては、新入社員にいきなり大きな仕事を任せるわけもなく、まずは下積みのような仕事をさせます。
- 新入社員になった当初は「話が違うじゃないか」と憤り、やがて、会社の実体が見えてくる中で、「この会社は、自分が思い描いていた場所ではない」と悟るのです。
このミスマッチが早期の退職につながっているケースも多々あると考えられます。
理不尽なこと
上で述べたミスマッチに至る以前の「あぁ、これは新入社員にとって、ショックが大きいだろうなぁ・・・」と思った話があります。
初任地が予想外の部署だった
留学経験があり、TOEICも高得点のA君は、語学力が生かせる海外のマーケティング部門を希望。内定後の人事部面談において、「配属先は希望する部署になる予定。即戦力として期待しているよ」と告げられていました。
ところが、実際に配属となった場所は、人口が数万人の地方市にある営業所。
建物は古びた平屋建てで、社員は名ばかりの所長を含めて、くたびれたオジサンが3名。
仕事は、毎日、田舎道を数十キロ、軽四を運転してのお得意先まわり。
と言っても、これといった商談がないため、ただの「ご機嫌伺い」のようなものだったそうです。
さらに、A君が配属される予定だった部署には、別の同期が配属になっており、「おかしい。話が違う」と感じていたのです。
思い余って、面談をしてくれた人事部の人に理由を聞くと一言、「人事上の都合で決まったこと」としか、答えがなかったそうです。
入社式の席順とその後
B君の入社式では、座席は五十音順で並んで座るようになっていました。
ところが、最前列だけ、五十音順に関係なく座っている新入社員が十数名おり、両端はいくつか空席のまま、明らかに区別されている状況だったそうです。その中には、同じ大学・学部の友人(C君)もいます。
式が終わって、場を変えてガイダンスを受け、夜は懇親会に。
そのときC君から、こんな話が。
「入社式のあと、最前列の人間はビル最上階にある社長室に連れて行かれた。そのとき社長から、『お前たち、窓の外を見てみろ。この社長室から見る景色が将来、お前たちが見る景色になるんだからな。しっかりと目に焼き付けておけ』と言われた」
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いかがでしょうか?
前者は、「人事部に騙された」という思いとともに、会社の「冷淡さ」を知ったものです。
後者は、いつの間にか将来の幹部候補が選別されていて、それを入社式のときに初めて知らされた、というもの。
どちらも、新入社員にとって、大変なショックだったろうことは、容易に想像できますね。
割り切りと客観視
残念ながら、会社の中では、こういった理不尽といえる話はたくさんあります。
特に会社の風習というか「企業風土」として根付いていることや、人事絡みで、訳の分からない話はゴロゴロしているでしょう。
もっともっとエグイ話もあるかもしれません。
理不尽で納得が行かない話に直面すると、ストレスは溜まりまくります。
まして、自分自身が直接、悪影響を受けると、「やってられるか!」となりますよね。
ただ、いくらストレスを溜めようが、「やってられるか!」と思おうが、一個人、まして、新入社員が何とかしようとしたところで、何ともならないのが現実です。
ここで大切なのは、そもそも「会社は理不尽なもの」と割り切った上で、自分自身がどう対処するのか、だと思うのです。
さらに大切なことは、状況と自分自身を客観的に視ることと言えます。
割り切り
割り切るというのは、事実としてと受け入れること、あるいは、受け流すことともいえるでしょう。
自分の価値観で正否を判断するのは大切ですが、それはそれとする度量を持つ、ということでしょうか。(法律違反等は、話が別になりますが・・・)
「会社ってこういうもんだ」って思えるかどうかですね。
ただし、我が身に降りかかってきた火の粉は払うべきです。それ以前に、火の粉が降りかかってこないように努力はすべきです。
この時こそが、「会社は理不尽なもの」と分かっているかどうかによって、大きく対処が異なるのです。
「ありえる話」として現実感をもって対処できるか、「まさか?」と呆然と立ち尽くしてしまうか・・・。
時には、理不尽な処置を受け入れざるを得ないかもしれません。
その際も、割り切って次に向けて気持ちを切り替えるか、納得できずに尾を引くか・・・。
「会社は理不尽なもの」と分かっていれば、対応は変わってくるのです。
このように、受け入れるとは認知することであって、努力せず甘受せよ、ということではありません。
私の筆力不足で、言いたいことが十分伝わっていないかもしれませんが・・・、くれぐれも誤解なきようお願いします。
客観視
当事者になった場合に、客観視できるかどうかもとても大切です。
が、当事者であるがゆえに難しいことでもあります。
上のA君の例で言うと、おそらく営業所に急な欠員が出てしまい、その補充を一番動かしやすい「新入社員」で当て込んだという話なのでしょう。
それがA君だったのは、「別の同期」のほうが会社の期待が高かったからなのか、A君に現場の勉強をさせようという育成方針が出たのか、何らかの理由があるはずです。
このように会社の事情、人選の理由、そして何よりA君はまだ「いち新入社員」である、こういったことを客観的に推察できれば、受け止め方は変わってくるはずです。
もちろん、人事部の対応はいかがかとは思いますが。
また、B君は、将来の幹部候補として選抜されませんでした。それは残念ながら、会社のお眼鏡に適わなかったからであり、大学・学部という学歴フィルターではなく、本人の問題であったと言えるでしょう。
これらのように、当の本人にとっては「会社に理不尽なことをされた」と思うことであっても、見方を変えれば、あながちそうとは言い切れないこともあるのです。
なので、客観視できることが大切になるわけですね。
まとめ
以上のように、会社って理不尽なものですが、それを割り切ったうえで対処すること、そして、状況や自分自身を客観視することが、とても大切だといえます。
それとは別に、会社とどう向き合っていくのか、つまり、自分自身がどんな会社員人生を送りたいのかを、しっかりと考えることも大切です。
そして、何より、会社って、存外に良いところなのです。
このエントリーでは、厳しい話ばかり書きましたが、会社という場には、さまざまな人がいて、いろいろな機会があり、自分自身が成長できるところなのです。
これを楽しめるかどうかは、あなた次第です。
前途洋々たる皆さんが、4月からの新しい生活を楽しめるよう、心から応援します。
それでは、また、次回!